OECDのAI原則 第3回

OECDのAI原則 第3回

更に前掲「経済教室」記事中の「世界の専門家を集めたAI専門家会合」の部分は、以下の〈表4〉と写真が示すような会合であった8。この専門家会合で、理事会勧告の基になる文言の検討に、日本の共同代表として筆者は参加・発言してきた訳であるが、以上のような働き掛けの結果、日本のこれまでの有識者会議の成果が最終的に理事会勧告となった〈OECDのAI原則〉に多く盛り込まれることになったのである9

表4:OECD「AI専門家会合—AIGO『エイゴー』又は『エイ・アイ・ゴー』—」の開催

開催年月場所
2018年9月OECD(@パリ)
2018年11月OECD(@パリ)
2019年1月MIT——マサチューセッツ工科大学(@ボストン)10
2019年2月ドバイ(@UAE:アラブ首長国連合)(筆者不参加)
AIGO第一回会合@パリ(2018.9.)AIGO第二回会合@パリ(2018.11.) (左列の左端から二番目で名札を立てて筆者発言中)(奥の列左側で名札を立てて発言待機中の筆者)

AIGO第一回会合@パリ(2018.9.)(左列の左端から二番目で名札を立てて筆者発言中)

AIGO第二回会合@パリ(2018.11.)

AIGO第二回会合@パリ(2018.11.)(奥の列左側で名札を立てて発言待機中の筆者)

AIGO第三回会合@MIT(マサチューセッツ工科大学)inボストン(2019.1.)

AIGO第三回会合@MIT(マサチューセッツ工科大学)inボストン11(2019.1.)

右写真の奥の列右から二番目で筆者発言中

ボストン会合にて、右写真の奥の列右から二番目で筆者発言中

8 OECD, OECD Moves forward on Developing Guidelines for Artificial Intelligence(AI), Feb. 20, 2019(last visited Aug. 12, 2019)

9 この日本の成果について、有識者会議の報告書は次のように伝えている。

我が国は、国際社会においてもこれらの検討成果を積極的に発信し、特に、OECDが理事会勧告案を策定するために2018年(平成30年)9月に設置した専門家会合(AI expert Group at the OECD)においては、我が国から参加した有識者より、人間中心のAI社会原則、AI開発ガイドライン案、AI利活用原則案のそれぞれについて、その内容のみならず、検討の背景や検討にあたり行われた議論の状況について紹介するなど、OECD理事会勧告の原案策定にあたり大きな貢献を行った。このため、2019年(令和元年)5月に公表されたOECD理事会勧告(Recommendation on Artificial Intelligence)は、我が国において検討してきた上述の各原則、ガイドラインと整合のとられたものとなっている。…このように、AIに関する原則については、我が国が国際的な議論を主導してきた結果、その概念については、概ね国際的にコンセンサスが得られつつある

総務省・AIネットワーク社会推進会議「報告書2019」2019年8月9日22~23頁(last visited Aug. 14, 2019)(強調付加)

10 ボストンに於ける会合の様子は、以下の「ニューヨーク・タイムズ」紙に於いて、筆者の写真入りで紹介されている。Steve Lohr, That Can Learn? Policymakers Are Trying to Figure That Out, The New York Times, Jan. 20, 2019(last visited Aug. 12, 2019)

11 同上参照。

まとめ

AIの開発や利活用等々においては日本でも、〈OECDのAI原則〉のみならず、その土台になった前掲の日本の有識者会議の検討成果を考慮することが求められる。更に今後(2019年秋以降)には、これまでの諸成果・諸原則の、いわば詳細設計とでもいうべき具体的な基準作りの段階に入る予定である12。その動向も、AIの開発・利活用等を検討する企業は把握して順守することができるように備えることが肝要である。

12 E.g.,「報告書2019」前掲注9, at 2, 23, 24, 45, 46頁