【過去開催講座の紹介】国際契約実務者のための「英文契約における『モラル条項』を学ぶ」講座 2016年3月

短期集中講座

IPEC法務英語で過去に開催した講座を紹介します。

【国際契約実務者のための「英文契約における『モラル条項』を学ぶ」講座 2016年3月開催】

講座のねらい

企業・商品の広告・推奨を、著名人に依頼する英文契約は、「Talent Agreement」や「endorsement deal」等と呼ばれます。そのような契約関係において、著名人側が不祥事等を引き起こした場合、却ってスポンサー企業・商品のイメージが悪化します。そこで、英文契約の実務では、「モラル条項」(morals clause)と呼ばれる規定を契約書に挿入しておき、不祥事等の場合に契約を終了できるように備えるのが通例です。
しかし米国では、そのような条項が挿入されていても、著名人側の不祥事と思える事態が生じたからといって、むやみやたらと契約を終了さえることが裁判所に認められるとは限りません。モラル条項に基づく契約終了を企業側が言い渡すと、場合によっては「誠実かつ公正な取り扱い」(good faith and fair dealing)の義務違反や、雇用差別による損害賠償を課されるおそれもあり得ます。
今回の講座では、Talent Agreementにおけるそのような「モラル条項」を分析した米国の専門的な英文論考と、代表的裁判例を読み解くことで、以下を習得できます。

  • 「モラル条項」(morals clause)の法理を理解できる。
  • 「モラル条項」の実際の文言例を、裁判例などを通じて理解できる。
  • 「モラル条項」に基づく契約終了の決定は、「誠実かつ公正」に行わなければならないという法理も具体例を通じて理解できる。
  • 英文裁判例を読むための基礎知識を学べる。

講座スケジュール

2016年3月5日(土)13:00~17:50 第1~3回目
2016年3月12日(土)13:00~16:10 第4~5回目

日時 授業内容
1回目
13:00-14:30
・判例を読むために必要な知識と理解
-裁判制度(連邦・州)
-民事訴訟法や証拠法上の基本的法律用語や基本概念
・アメリカ契約法の基本構造
教科書:平野晋『体系アメリカ契約法~英文契約の理論と法務~』(中央大学出版部)
・モラル条項の概要
論考:Noah B Kressler, Note, Using the Morals Clause in Talent Agreement: A Historical, Legal and Practical Guide, 29 Columbia Journal of Law & The Arts 235(2005).
2回目
14:40-16:10
・有料データベースで判例を調べる
-有料データベースの概要、使い方の説明
-判例検索方法の説明
-制定法の検索方法、および論文や文献・リステイントメント等の検索方法
3回目
16:20-17:50
・ハリウッドにおいてモラル条項の合法性が確立された、マッカシー旋風時代の代表判例を読む
判例:Twentieth Century-Fox Corp. v. Lardner., 216 F.2d 844 (9th Cir. 1954).
映画会社と契約をしていた脚本家が、連邦議会での証言を拒否した為に議会侮辱罪で有罪・投獄された後に、モラル条項違反を理由に解雇され、損害賠償を映画会社に求め、第一審では脚本家が勝訴。しかし上訴の結果、覆った事例を学びます。
4回目
13:00-14:30
・アメリカン・フットボールの有名選手が、ツイッター上で物議を醸し出す書き込みをした為に、モラル条項違反を理由に解雇したスポーツ衣料メーカーの判断が、裁判所によって支持されなかった事例を読む
判例:Mendenhall v. Hanesbrands, Inc., 856 F.Supp.2d 717 (M.D.N.C 2012).
モラル条項違反をスポンサー企業側が裁量で決められる旨の規定があっても、契約終了の決定は誠実かつ公正に行わなければならないと判断された事例を学びます。
5回目
14:40-16:10
・再三にわたり警察沙汰の痴話喧嘩を起こした女性TVリポーターが、モラル条項違反により契約を終了させられた事例を読む
判例:Galaviz v. Post-Newsweek Station, 2009 WL 2105981 (W.D.Tex), 及び380 Fed. Appx. 457, 2010 WL 2294724 (C.A.5(Tex.))(控訴審)
不祥事を起こした他の男性従業員は解雇されなかったにも拘らず、本件女性原告が解雇されても不当な差別に当たらない、と裁判所が判断した理由を具体的事例から学びます。

教科書:平野晋『体系アメリカ契約法~英文契約の理論と法務~』(中央大学出版部)
副教材:米国判例、他

講師

平野晋氏

職歴

現職 中央大学教授(総合政策学部)米国弁護士(NY州)・博士(総合政策)

前職 (株)NTTドコモ法務室長
MORGAN, LEWIS & BOCKIUS法律事務所(ロサンゼルス事務所)研修生

学歴・研究歴

中央大学法学部法律学科卒業、
コーネル大学(法科)大学院(Cornell Law School)修士課程修了(LL.M.)
同大学院法務研究科特別研究生(『コーネル国際ロージャーナル 』 誌編集員)
同大学院客員研究員(Visiting Scholar)

おすすめの方

英文・国際契約の担当者、米国法・司法制度を理解したい方、国際ビジネスに従事している方などにおすすめです。

受講料

38,000円(税込)

使用教科書代別途必要

『体系アメリカ契約法~英文稀有役の理論と法務~』(中央大学出版部)」7,020円(税込)

※使用教科書をご持参の場合には受講料のみのお支払となります。
※教科書及び1回目の副教材の米国判例は、受講料・教科書代のお手続き完了後より配布します。
※原則、ご入金後の返金は致しませんので、ご了承ください。