IPEC法務英語で過去に開催した講座を紹介します。
【国際契約実務者のための「米国判例から学ぶ英米契約と一般条項」講座Ⅱ 2015年7月開催】
講座の狙い
英文契約では、一つの単語が複数の意味に解釈されるドラフティング(語義上の多義性:semantic ambiguity)を避けねばなりません。さらに、修飾語句が文章中の何れの語句を修飾しているのかについての多義的な解釈(構文上の多義性:syntactic ambiguity)も生じないように、ドラフティングしなければなりません。多義的な契約書をドラフティングすると、起案した当事者に不利に解釈する原則(コントラ・プロフェレンテム:contra proferentem)が適用されるおそれが生じます。しかし、実際にどのような文言や文章が、多義性ゆえの紛争に発展するのかを日本で修得することは困難です。多義性を巡る紛争は「判例」に現れるために、判例を読んで具体例を理解し身につけることが求められるからです。言い換えれば「判例を読むこと」が、正しい英文契約ドラフティングの原点になるのです。この講座では、英文契約書の「多義性」が争われた実際の判例を読むことで、次のことを修得できます。
- 「語義上の多義性」や「構文上の多義性」の意味を理解できる。
- 「コンマ」を付け忘れただけで免責範囲が狭まってしまうドラフティング上の失敗を理解できる。
- 起案した当事者に不利に解釈する原則(contra proferentem)も理解できる。
- 英文判例を読むための基礎知識を学べる。
講座スケジュール
2015年7月11日(土)1~3回目、7月25日(土)4~5回目
日時 | 授業内容 |
---|---|
1回目 13:00-14:30 |
・判例を読むために必要な知識と理解 -裁判制度(連邦・州) -民事訴訟法や証拠法上の基本的法律用語や基本的概念 ・アメリカ契約法の基礎 教科書:「体系アメリカ契約法~英文契約の理論と法務~」(中央大学出版部) ・責任上限額を「the amounts paid and due」までと記載しても、 未払額の責任を免除している意思が明確ではなく多義的である、と解釈された判例を読む(語義上の多義性) 判例: Aware, Inc. v. Centillium Communications, Inc. 604 F.Supp.2d 306 (D.Ma. 2009). 「各条項にできるだけ効力が生じるように解釈する原則」 「通常の意味として解釈する原則」「全体として解釈する原則」等の解釈原則を学びます。 |
2回目 14:40-16:10 |
・有料データベースで判例を調べる -有料データベースの概要、使い方の説明 -判例検索方法の説明 -制定法の検索方法、および論文や文献・リステイトメント等の検索方法 |
3回目 16:20-17:50 |
・「parking area」という契約文言には「parking spaces」という意味も含まれるか否かの 多義性が争われた判例を読む(語義上の多義性) 判例:100 Center Development Company v. Hacienda Mexican Restaurant, Inc. 546 N.E.2d 1256 (Ind.App. 1989). 「contra proferentem」「全体として解釈する原則」「一貫性が維持されるように解釈する原則」 「通常の意味として解釈する原則」等の解釈原則を学びます。 |
4回目 13:00-14:30 |
・政府がレンタルした民間ヘリコプタの墜落時の、危険を政府が負担する場合を制限する契約にも拘わらず、 契約文の多義性ゆえに政府が危険負担を免れない、と解釈された判例を読む(構文上の多義性) 判例:S. W. Aircraft Inc. v. U.S., 551 F.2d 1208 (Ct. Cl. 1977). 「通常の意味として解釈する原則」「置く場所を間違えている修飾語」 「contra proferentem」等の解釈原則を学びます。 |
5回目 14:40-16:10 |
・祖父の家に遊びに来ていた孫の負った怪我に対する保険料金が支払われるべきか否かが争われた判例を読む (構文上の多義性) 判例:Indiana Farmers Mutual Insurance Co. v. Imel, 817 N.E.2d 299 (Ind.App. 2004). コンマの有無で解釈が変わる問題等を学びます。 |
使用教材:「国際契約の起案学~法律英語の地球標準~」(木鐸社)
「体系アメリカ契約法~英文契約の理論と法務~」(中央大学出版部)
副教材:米国判例 他
講師
平野晋氏
職歴
現職 中央大学教授(総合政策学部)米国弁護士(NY州)・博士(総合政策)(株)NTTドコモ法務室長
MORGAN, LEWIS & BOCKIUS法律事務所(ロサンゼルス事務所)研修生
学歴
中央大学法学部法律学科卒業、
コーネル大学(法科)大学院(Cornell Law School)修士課程修了(LL.M.)
コーネル大学(法科)大学院(Cornell Law School)法務研究科特別研究生(コーネル国際ロージャーナル誌編集員)
お薦めの方
英文・国際契約の担当者、国際法務担当者、米国法・司法制度を理解した方、国際ビジネスに従事している方など
※企業研修としてご活用ください。