受講生の声 短期集中講座 第1弾「米国判例を読む」
【2013年7月】

IPEC主催の「米国判例を読む」(第1回講義)を受講して

講師は、サイバー法分野の第一人者である平野晋教授(中央大学)である。 第1回目の講義では、冒頭に「なぜこのような講座をやることになったか」を平野先生が次の通り説明した。 「国際法務に従事する人にとって、判例に記載されている内容の中で最も重要な内容は結論(判決)ではなく、(判決に至った)理由であると考える。けれどもその理由は、判例の中で分類されて記載されているわけではなく、いたるところに散らばって書かれている。したがって核心となる理由を探し出すことは、国際法務担当者にとってとても良い訓練となる。」
受講した立場で言えば、英文判例を読むこと、日本語に翻訳された判例ではなく原資料を読むと言うことにも大きな意義があったと思う。翻訳文では感じることのできない、そして理解できないものがある。原資料から学べるものは限りなく大きいのである。

本講座では、ウエストロー・ジャパン社の協力で米国判例データベースに無料でアクセスでき(3日間限定)関係判例を読むことができた。

Westlaw社の上田氏は、判例データベースの使い方の説明と同時に、米国の法体系についても非常にわかりやすく説明してくれた。多分日本で一番わかりやすく説明できる人であろう。

米国法は大陸法系の対概念であるコモンローに属するが、判例法だけではなく制定法も存在する。その混在する状況を、「判例どうしで矛盾しているものがあり、また判例だけに任せておくと大変な事になるものもあるので、絆創膏的な役割として制定法が存在する。」と説明した。
さらに、判例における日米比較も行ってくれた。米国法の知識が深くない人には響いたのではないだろうか。 例えば事件名では、米国の事件名は両当事者(原告と被告)名であるのに、日本のそれは、訴訟請求の対象を理解できる事件名となっている。
また裁判請求では、米国においては、原告は「過去に同様の事件があり、このような判決が出ているので、同じように扱ってくださいと判例を持ちこむ。」と説明してくれた。
そして最後に、「日本では法律は国会で採択(法の修正や廃止などを含め)されるので、官報をフォローしておけば良いが、米国判例法のフォローは簡単にはいかない。全部又は一部について否定された判例はどれかということを知ること自体至難である。そのために専門サービスであるWestlawなどのKeyCiteが存在している。」と営業も忘れなかった。

平野先生の第1回目の講義では、米国が通信品位法(Communication Decency Act of 1996)を制定する前の判例(1991年判決)Cubby, Inc. v. CompuServe Inc. 事件と、通信品位法制定の契機となった判例(1995年判決)Stratton Oakmont v. Prodigy 事件を読んだ。
双方ともコンピュータ通信による情報提供側のコンテンツの内容にかかわる責任について争った事件である。
英文の判例を読むにあたり、米国の民事訴訟手続きに関する知識は不可欠である。講義のテキストブック「アメリカ不法行為法」の記載を助けに何とか二つの判例を読んで、講義に臨んだ。学生時代に戻った気分になった。けれども学生時代とは比べ物にならないくらい講義の内容を理解できたのではないだろうか。やはり生涯学び続ける姿勢が大切なのかもしれない。
猛暑と忙しい業務に負けずに、次回の講義に向けた宿題(別の二つの判例)に取り組み、ケース・ブリーフ作成に挑戦してみる。

講師からのメッセージ

国際法務に従事する人にとって、判例に記載されている内容の中で最も重要な内容は「結論(判決)」ではなく、(判決に至った)「理由 (reasoning)」です。けれどもその「理由」は、必ずしも判例の中に分類されて記載されているわけではなく、いたるところに散らばって書かれています。したがって核心となる理由を探し出すことは、国際法務担当者にとって法的思考力を養う為のとても良い訓練となるでしょう。